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東京競売ウォッチ

2018年2月6日

第401回 年始めの開札で10億円超の落札

 2018年最初の東京地裁本庁の開札は1月23日であった。その中で目を引いたのが銀座線「田原町」駅徒歩1分に立地するビルであった。

 敷地は72坪弱あり東側で幅員33mの都道(国際通り)に面している。敷地のうち約29坪は近隣のお寺からの借地である。建物は鉄骨造9階建てで延床面積は510坪弱あり、所有地と借地に跨って建設されている。

 またこの建物は前所有者の関係者がその一部を占有していて、現在の所有者と係争状態にある。地主であるお寺は、前所有者に対し土地賃貸借契約の解除を提起していて、その訴訟は地主側の勝訴となっている。地主(お寺)としては、隣地と跨っている建物の収去は実際には難しく、良い借地人に変わるのであれば継続しての賃貸も了承している。

 そんな中この建物の売却基準価額は2億2080万円であったが、これに対し16本の入札があり、最高価10億3600万円で、現在の所有者が落札した。競売では債務者には売却決定はなされないが、単なる所有者には売却決定はなされる。落札者である現所有者は前所有者の明渡を引渡命令にて行え、また借地権の譲渡承諾も得やすい。結果として権利関係が錯綜した物件を現所有者が競売で一気に整理した感じである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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