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東京競売ウォッチ

2014年8月19日

第243回 空家となっている廃屋の一戸建て

 総務省から2013年10月時点の全国の空家について発表があった。それによれば、全国の空家数は820万戸にも及ぶとのことでる。今後も益々増加すると見られ、空家対策はさらに問題になっていくだろう。

 7月24日開札では、東急大井町線「上野毛」駅徒歩約8分に立地する一戸建てが開札対象になった。建物は屋根や天井、壁の一部がなく、利用は不能であり、廃屋である。おそらく隣地の居住者などは、不測な火災などの心配があろうと思われる。

 さて、この物件の土地は南西側で幅員約5.5mの私道に面している。その私道は42条2項道路であるが、その共有持分も競売対象になっている。

 この点でも、この私道を同じく共有している近隣戸建所有者は迷惑を被っている可能性がある。同一私道共有者の近隣者が建替えを実施しようとする場合、私道共有者全員の私道に対する工事や掘削等の承諾を必要とする場合がある。

 このとき当該廃屋の所有者は、当該物件に住んでいないこともあって、承諾書の取り付けが難しいことが想像される。それによって近隣の円滑な建替えに支障が出るということである。

 そんな物件であるが、土地は221坪強と広い。売却基準価額は1億3,457万円であったが、これに対し入札は2本のみで、最高価1億6,000万円で不動産会社が競落していった。

 入札本数が伸びなかったのは、おそらく接道状況から、分割して建売事業にしにくいことが大きな要因であろう。

 ところで、今回の競落により、当該土地の廃屋が解体されることになり、地域にとってはプラスだろう。空家対策の一つとして、今後、競売制度活用も検討する余地があるように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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