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東京競売ウォッチ

2012年1月10日

第119回 2012年の競売市場

 2012年の不動産競売市場を占う一つの鍵は不動産に対する金融情勢であろう。2011年も多くの入札を集めたのは、住宅ローン対象のマンション、一戸建てであった。

 落札業者が確実に再販を見込めるのは、やはり実需のエンドユーザーであり、その背景には積極的に住宅ローンを融資する金融機関がある。2012年も引き続きこの傾向は続くであろう。

 あと、これに加え、投資用の不動産に対する銀行融資の情勢がどうなるのかが市場動向を左右するだろう。貸付対象不動産の種別、金利、貸付期間や必要自己資金といった貸付条件など、金融機関の姿勢は特に投資用不動産に関して、その時々で変化する。

 2011年12月20日は、この年最後の開札であったが、この日2つのワンルームマンションが売却基準価額の2倍以上で落札された。

 一つは都営浅草線「戸越」駅徒歩約4分に立地する専有面積約6.6坪の物件である。

 もう一方は東急目黒線「不動前」駅徒歩約5分に立地する専有面積約6坪の物件である。

 双方の共通点は築年が10年以内であり、最寄駅から近く、マンション全体戸数が50戸超と、ある程度規模があることなどがある。

 さて、これらのマンションの落札者はワンルームマンションを多く販売する業者であった。おそらく投資家への販売の際には、提携の金融機関からの融資を利用させると考えられる。

 金融機関の融資適確の物件は、結果として強気の入札が可能なのである。今後の不動産金融情勢が注目される。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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