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東京競売ウォッチ

2015年8月11日

第288回 荻窪の築40年、区分所有店舗

 収益不動産の利回りが低下している。リーマンショック後は1棟の共同住宅であれ、ワンルームマンションであれ、表面利回り年10%の物件取得は可能であったが、今は東京都心部では少なくとも困難である。高い利回りを求めれば、築年が古いことや、土地の権利が借地権であることなどを承知しなければならない。区分所有の店舗もその特殊性から比較的高い利回りが得られる。

 7月23日開札では、JR中央線「荻窪」駅徒歩約2分に立地する区分所有店舗が対象になった。この物件、区分所有であることに加え、構造が鉄骨・木造であり、さらに築40年近く経過している。現況調査報告書によれば、雨漏りやネズミ被害も見受けられるとのことで、今後修繕など課題は山積であろう。

 しかし、専有面積約8.5坪に対して、月額賃料は約18万円、年収200万円超で、売却基準価額985万円をベースにすると、表面利回りは年20%以上になる。結果として利回りを求め集まった入札は16本で、最高価2,460万円で個人に落札された。これは売却基準価額の約2.5倍に相当し、表面利回りは年9%をやや下回る水準だ。高めの利回りだが、取得後の修繕コストや、他の区分所有者との関係調整の手間、そして建物の耐久性を考えると、競落価格は果たして安いのであろうか。

 立地の魅力が建物の問題点をどれだけ払拭できるのか、投資家の判断は分かれるところであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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