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東京競売ウォッチ

2011年11月29日

第115回 浅草の借地権付建物

 借地権付建物は入札が比較的少ない。借地権は一般的にも人気がないが、競売の借地権ならではの原因もある。

 競売の借地権付建物の買受人は競落後、地主に賃借権譲渡の承諾を得て、新たに土地賃貸借契約の締結を自身の手によって行わなければならない。その際に、地主から承諾料の額などの譲渡承諾の条件をどういう形で呈示されるかは、3点セットなどには書かれていない。

 言わば、出たとこ勝負になる。もちろん入札前に地主から、条件等を聞き出せればよいが、そういった協力が得られないケースが多い。

 そんな特徴の借地権付建物であるが、10月27日開札で、売却基準価額が7,118万円と高額の借地権付建物に5本の入札があり、上乗せ率60%超の1億1,500万円で落札されている。

 その物件は浅草国際通りに面し、つくばエクスプレス「浅草」駅至近に建つビルである。この借地の地主はあの「浅草寺」であり、この物件の借地契約の解除を検討しているとの記載が現況調査報告書にある。これまで地代の滞納が繰り返されたことや、更新料の支払いがないことなどが、その理由とのことである。

 ただ現在、地代については競売の申立債権者が「地代代払い許可」を得て、借地人に代わり地主に支払っているようだ。地主としては、地代滞納がなくなっても、更新料の未納状態は解消していないことから、賃貸借契約解除を引き続き検討しているとのことである。

 このような借地権の状況にもかかわらず、複数の応札があり、競落されたのは、この物件の優れた立地に要因があろう。

 また、地主がお寺であるため、基本的に地代や名義変更料(本件の場合は現況調査報告書に予想される金額の記載がある)を支払えば、名義変更に応じてくれる確率が高いことも、もう一つの要因だと思われる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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