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東京競売ウォッチ

2011年7月5日

第97回荏原中延の共同住宅

 6月23日開札では、久々に特別売却物件に回った物件が8物件と多かった。また、競落1物件あたりの入札本数も9本強と、年初に比しては低い水準である。その中で特別売却に回った物件に高級住宅地が含まれているのに目を引かれた。

 それは小田急小田原線「成城学園前」駅徒歩約6分の隣接する一戸建ての2物件。それぞれ土地は80坪以上で、幅員約6mの公道に面し、建物は築約10年の木造2階建て、延床面積は40坪以上である。これら2物件の売却基準価額は1億3,623万円と1億3,921万円であった。

 名の知れた住宅地であり、近隣の基準地価は坪220万円強であるところから、決して高いとは思われないが、入札がなかった。

 おそらくこれは、再販業者が、グロスが大きい物件の仕入れに慎重になっているからだと思われる。震災後は高グロスの住宅は取引が減少しているとの話も、このところよく聞く。

 ところが一方で大量の入札34本を集めた物件もある。その物件は東急池上線「荏原中延」駅徒歩約8分に立地する木造の共同住宅であった。築3年と新しいこのアパートはワンルーム6戸と1LDK1戸からなり、年収は650万円程度期待できよう。

 この物件の売却基準価額は5,600万円であったが、競落価格はその1.6倍強の8,981万円で、個人が落札していった。

 これは表面利回りで7%強の水準で、評価書上の公示価格などを参考にした本物件の積算価格よりも高い。震災後も個人の収益物件ニーズは堅調のようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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