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東京競売ウォッチ

2017年11月28日

第394回 最先の借地権付ファミリーマンションが高値落札

 ファミリーマンションについては、ワンルームマンションと異なり、明渡後再販目的での入札が一般的である。従って抵当権設定前からの賃借権に基づく賃借人がいる、いわゆるオーナーチェンジ型の物件は大量入札になりにくい。しかし、競売物件数の減少などで、再販業者もこのオーナーチェンジファミリーマンションにも入札するケースがよく見られるようになった。

 11月9日開札では都営三田線「西巣鴨」駅徒歩約1分に立地する専有面積約18.5坪の2SDKのマンションに21本の入札が集まり、売却基準価額(1678万円)の約1.8倍の3030万円弱で再販業者が落札していった。この部屋を占有しているのが、最先の賃借人で、賃料は共益費込で月額128000円である。年間153万円強の収入であるが、管理費等固定資産税等を差し引いた実収は年間約112万円である。落札価格から収益利回りを考えると年3.6%程度になり、高い利回りとは言えない。しかし、空室であれば立地条件が良く、昭和60年11月築と新耐震基準での建設でもあり、成約事例から考えても専有面積坪単価約200万円、総額にして3700万円程度では売却できると思われる。

 取得後、交渉により明渡を行い再販するか、賃借人が解除・退去となった後売却するか(所有期間は賃貸資産とする。)双方考えられる。こういった最先の賃借権付ファミリーマンションも競売対象物件が減少する中、立地次第で入札が多く集まる現状である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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