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東京競売ウォッチ

2024年06月18日

第701回 立退き訴訟中のホテル競売

 JR山手線「目黒」駅徒歩約4分に立地するホテルプリンセスガーデンの1室の共有持分が5月29日開札対象になった。このホテルはかつて平成バブル前にライベックスという会社が投資用で分譲したものである。投資家は1部屋もしくは1部屋の共有持分を取得し、ホテルとして上がった収益について、経費控除後分配を受けるというものであった。なおこのホテルの敷地権は地上権で現在法定更新状態である。

 今般競売対象となったのは専有面積約8.6坪の部屋の共有持分16分1で、売却基準価額が98万円となっていた。これに対し入札8本が入り、最高価350万円で競落された。この競落価格を1部屋分に換算すると約5600万円になり、専有面積坪単価650万円強でマンション価格としては考えられない数字ではない。しかし、敷地は地上権でかつ共有持分なのでこの競落価格は法外に高い印象を受ける。

 また、ホテル区分所有者が組織する管理組合から委託を受けてホテル運営をしている会社が、管理組合への賃料等を支払っていないとのこと。従ってホテルの所有者は収益の分配を得られないばかりか、地代や管理費等そして固定資産税等負担をしており、赤字の状態だとのことである。ちなみにホテル管理組合はホテル運営会社に対し立退き訴訟を起こしているようで、まさに法的トラブル渦中にある物件と言える。そんな物件(共有持分)が高い水準で競落したのは、おそらくこのホテルの区分所有権を買い集め、管理組合決議をもって売却等を企図する者だと思われる。今後もこの物件が競売市場に登場する可能性があると思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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