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東京競売ウォッチ

2015年4月14日

第273回 係争含みの借地権付建物に入札5本

 平成27年も3カ月経過したが、今年に入っての開札対象物件数は211物件であった。これは昨年の同時期の累計物件数398物件の約半分まで減少する結果である。このままの傾向で推移すれば、東京地裁本庁では開札対象物件が年間1,000件を割り込むことになりそうだ。そうなると、ピークであった平成11年頃の10分の1という水準になる。こういう状況では少々難ありの物件にも応札がある。

 3月12日開札で中野区の借地権付建物に入札5本で、売却基準価額494万円に対し最高価808万円にて業者が落札した事例があった。実はこの物件、昨年8月7日に1回落札されている。そして、この時の売却基準価額は659万円であり、入札は5本集まり1,400万円強で落札された。ところが今回、新たに低い売却基準価額で再度入札になっている。これは前回落札後、競落人が売却条件の相違を裁判所に申し立て、売却許可決定を取り消させ、再度入札になったと考えられる。

 その相違点と言うのが、水道管の引き込みについてである。今回の入札にあたり、昨年12月1日付で評価人の意見書が添えられていて、それには、本物件への水道管引き込みが隣地を経由して公道よりなされていること。そして、その隣地所有者が引込水道管の経路の変更要請意向を表明していて、本物件の建替え時にはこの件について係争が生じる可能性があることが記されている。その上で売却基準価額が4分の1程度切り下げられている。おそらくは昨年競落した買受人がこの事態を知り、代金納付前に売却許可決定の取消しを申し立てたのではないだろうか。

 こういったいわば係争含みの物件であるが、結果として売却基準価額を大きく上回り競落されていく。市場の過熱を感じさせる事例と言えよう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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