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東京競売ウォッチ

2023年11月14日

第674回 売却基準価額未満での競落マンション

 国土交通省がマンションの修繕積立金について値上げのガイドラインを示したが、これをきっかけとしてマンションの2つの老いが話題になっている。建物の老いと住民の老いである。競売市場においてもこの2つの老いはマンションの競落水準に影響を与えている。10月25日開札では京急本線「六郷土手」駅徒歩約7分に立地する築44年専有面積約17坪の3DKのマンションが対象となった。このマンションの売却基準価額は1940万円であったが、入札は3本に止まり、最高価1747万円と売却基準価額を約1割下回っての競落であった。近時都内マンションは多くが売却基準価額を40%程度は上回る競落である中でかなり低い水準の競落に感じる。これはやはり旧耐震基準建築であることもあろうが、マンションの管理状況などが関係しているように思う。このマンションの修繕積立金は月額7200円であるが、これは専有面積1坪あたり423円である。この水準はこの築年のマンションとしては低く、将来の大規模修繕実施に不安がありそうだ。古いマンションは毎月の修繕積立金の引き上げが必要にもかかわらず、住民の老いを背景にそれを実施できないことが多い。競売市場においても今後、マンションの修繕積立金設定が適正か、その積立総額がどの程度かを考慮した入札価格設定がなされていくように思う。

 このマンションの評価書においては価格補正ということで7割の評価かさ上げが行われている。これは近時のマンション価格上昇を反映した措置と思われるが、今後同様のマンションには逆に2つの老いを考慮した減額も必要になるのではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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