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東京競売ウォッチ

2013年6月18日

第185回 前所有者が自殺した物件

 競売市場は活況で、競落率もほぼ100%に近い水準が続いている。そんな中で応札がない物件は、やはり特殊事情を抱えているものということになる。

 5月30日開札では、3物件が不落札になったが、それらにはいずれも、入札を躊躇させる特殊事情が存する。

 一つは、借地権付建物で、その借地権について、名義変更についての障害がある。二つ目の物件は、再建築不可がネックとなった。そして三つ目は、物件内で前所有者が自殺している事実が障害となったと思われる。

 この最後の自殺物件については、JR常磐線「金町」駅から約2.5km離れたところに立地している。築25年を経過していて、専有面積が約16坪の2DKの部屋である。

 この物件の前所有者は、昨年7月に本物件内で自殺をしており、現在の所有者は、その相続人の妻子である。3点セットの評価書を見てみると、自殺によっての減額は30%になっていて、売却基準価額は473万円(買受可能価額378.4万円)であった。

 結果、この物件には応札ゼロで、特別売却に回った。従前から事故物件に対する応札は結構見られる。しかし、本物件については、まずは事故があったのが、本物件差押後の最近の出来事であること、そして現在その遺族が占有しており、明渡し請求について心情的に厳しい面が予想される。そんなことから応札がなかったのではないかと推察される。

 最近の競売市場で特売に回るのは、かなりの瑕を背負っている物件となる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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