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東京競売ウォッチ

2012年4月24日

第133回 引渡命令書の送達

 先週の本欄では、引渡命令の申立について記載した。そこで、今回は引渡命令に関わる弊社への質問を取り上げてみたい。

 まずは、送達の問題である。先週の例のように、競売申立時にその物件にいた買受人に対抗できない占有者が引っ越してしまっていた場合、そこに引渡命令書を送達しても、当該占有者には届かない。引渡命令書は特別送達という方法で郵送され、書留のように、本人に手交され、記録を残す形である。ゆえに、なおさら届くことはない。

 ここで、よく質問されることが「不在が知れている所に引渡命令を送達して良いのか」というものである。

 答えは「それで構わない」である。もちろん、その占有者の引っ越し先がわかっていれば、裁判所に送達先を上申し、指定することはできる。しかし、もしそれがわからなくても、当該物件に送達すれば良いのである。なぜなら、競売の申立時の競売開始決定などをその場所で受け取っているので、その後、引っ越しをしても引渡命令は送達したことになるのである。

 もちろん、最初の特別送達のときに受け取る場合とは相異して、一旦裁判所にその特別送達での引渡命令が返送されたところで、改めて普通書留郵便で発送する(この場合、発送のみで送達の効果が生じる)という段取りを踏まねばならないので、引渡命令が確定するには、1週間以上余計に時間はかかるし、郵便切手代もかさむ。しかし、引っ越しした相手にも引渡命書の送達がなされたものと扱われるのである。

 なお、引渡命令は相手に送達されてから1週間は引渡命令に対する、占有者等からの執行抗告の期間になる。したがって、この期間を経過しないと、引渡命令は確定しないので注意をしたい。

 逆に確定したならば、不動産の引渡強制執行申立のための「執行文付与」という手続きが可能になる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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