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東京競売ウォッチ

2015年9月29日

第293回 都心型ワンルームマンション

 株価が乱高下する中、個人投資家の資金運用で不動産を考える方も増加している。特に東京のマンションが1棟物に手が出ない投資家には1番の投資ターゲットであろう。8月27日開札では、専有面積25㎡未満のワンルームマンション及び1(D)Kマンションが9戸開札になった。そして、この9戸のうち個人が落札したのが過半の5戸ある。残りの4戸のうち2戸が債権回収会社の自己競落と思われ、再販業者が落札したのは2戸のみであった。

 ここで競落の傾向として、ユニットバスが風呂桶とトイレ、洗面が一体型のいわゆる3点ユニットである物件は、再販業者は入札してこないということである。これは再販業者が再販時に購入者にローンを斡旋して販売するので、ローンが付きにくい3点ユニットバス物件は仕入れないと言うことである。この日、3点ユニットの物件は4戸あり、その全てが個人による落札であった。

 そのうち入札30本集めた物件を紹介する。その物件はJR山手線「上野」駅徒歩約5分に立地する築約23年の1Rで、専有面積6坪強である。売却基準価額は637万円であるが、競落価格は1,450万円であった。

 この部屋は最近まで月額88,000円にて社宅として賃貸されていたところ、現在は退去し、所有者(共有者)占有という状態になっている。この部屋を従前通りの条件で賃貸した場合、管理費や修繕積立金、固定資産税等を考慮すると年収は82万円程度と考えられる。滞納管理費はほとんどないので、競落価格を分母とすると利回りは年約5.6%である。

 ただし、賃貸にあたってのリフォーム費用や、登録免許税・不動産取得税など考慮すると、年約5%の利回りと見られる。都心型ワンルームマンションについて、この辺のレベルが最近の個人の投資目線なのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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