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東京競売ウォッチ

2018年3月6日

第405回 借地権共同住宅に大量入札?

 収益物件の人気は相変わらず根強い状況にあるが、2月23日開札では借地権のアパートに大量24本の入札が集まった。その物件は東京メトロ有楽町線「地下鉄成増」駅徒歩約2分に立地する。借地権対象の敷地は北側で幅員4mの公道に面する約59坪で、建物は築19年の鉄骨造で1Kなど14部屋から成り、年間収受賃料は1100万円程度期待できる。地代月額5.8万円(年間約70万円)や固定資産税等(年約24万円)を考慮しても年1000万円近い収入が見込める。

 そんな条件で売却基準価額は4203万円であったが、これに対し落札価格は9009万円と売却基準価額の2.1倍強の高水準で競落された。借地権付建物だけに地主に対しての名義変更料は必要であり、その額は評価書上では600万円弱と見積もられている。ただそのコストを含んでも実質年利回りは10%程度得られるので、この入札価格が設定されたのだろう。ただし名義変更について地主との交渉が上手く運ばぬ場合、裁判所の譲受許可を得ることになるが、この場合地主の裁判所の呈示価格での借地権買戻しが可能になる。(これを介入権という。)競落価格が高いことから、それを下回る買い戻し価格を裁判所が呈示するリスクは少しありそうだ。また地主が建物の共有者の一人であることも介入権行使の可能性を感じさせる。介入権は借地権付建物競落における特殊なリスクである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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