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東京競売ウォッチ

2013年2月19日

第169回 泉岳寺駅至近の商業ビル

 今年2回目の1月31日開札は競落率100%、完売の結果であった。

 活発な入札状況が年初より続いているが、その中で目を引いたのが、都営浅草線「泉岳寺」駅至近のビルである。

 このビルは、9階建ての商業ビルで、敷地は80坪弱、建物延床面積は500坪強あり、通常であれば、年収益が6,000万円程度期待できそうだ。ただし6階から9階を某財団法人が極めて低廉賃料で賃借している。

 この物件は平成23年に競売を申立てられたが、申立てられた当初は、この財団法人の賃借権を最先の賃借権として、認定・評価し、多額の前払い賃料も認めていた。しかし、そののち、このビルの所有者と、当該財団法人との関係を調査した結果、その賃借権は正常でないとされた。これにより某財団法人は、使用借権での占有となり、6カ月の明渡猶予も付与されず、買受人に明渡せねばならぬ立場となった。こういった権利関係の調査や、評定に時間がかかり、期間入札実施が遅れたのだろう。

 また、この某財団法人は、競売申立時期のあたりで、ある種の競売妨害に見える敷地への目的外建物建設を行っている。こういった占有者については、競落後の明渡交渉が容易でないことが予想される。

 しかし、それでも売却基準価額4億1,081万円に対し、12本もの入札があり、最高価6億5,199万円にて落札されていった。

 権利関係が複雑であっても好立地不動産に多くの入札が集まるのは、不動産市場の活況を先取りした現象かもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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