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東京競売ウォッチ

2018年6月26日

第419回 還元利回り3.3%での評価では不落札!

 6月7日開札で1物件のみ特別売却に回った物件があり、それがワンルームマンションであったので目を引いた。そのマンションは西武新宿線「上石神井」駅徒歩約8分に立地する築30年で5階建て総戸数48戸の中2階部分である。専有面積7坪強で、現在共益費込月額5.5万円で賃貸中である。管理費等、固定資産税等の年負担が約25万円であるので実質年収40万円強である。この条件で売却基準価額が970万円で、買受可能価額は776万円であったが応札は無かった。滞納管理費が15万円以上あるので、買受可能価額で購入したとしも総費用は790万円を超え、年利回りは5%強である。この水準ではこの立地、築年と勘案すると魅力が乏しかったということだろう。もっともこの占有者は買受人の代金納付後6か月間の明渡猶予対象者であるので、明渡した上再賃貸するなどして賃料上昇も可能ではある。

 しかし、賃料マーケットから推して収入アップは期待薄かもしれない。そもそもの売却基準価額が高水準過ぎた感じもする。それは評価書の中の収益還元価格を算出する際に使う還元利回りが3.3%と低い水準に設定したことが原因であろう。築30年の区分建物のワンルームであれば競落競争が激しい昨今でも5%以上には設定されるべきであろうと思う。そもそも評価書におけるこの還元利回り設定には裁判所の評価人間での指針や基準が定まっていない。今後評価人の主観のみではなく、客観的な物差しが必要なのではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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