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東京競売ウォッチ

2016年3月1日

第312回 表参道の築16年の1棟ビル

 株式市場は昨年に大方の経済評論家などが予想しなかった低水準である。マイナス金利という前代未聞の施策を施しても、円高・株安の状況に陥っている。この事態は土地にはどう影響するのだろうか。とくに、東京の一等地はこれまでの株高に歩調を合わせ価格が上昇してきた。

 さて100%落札であった2月9日開札では東京メトロ千代田線「表参道」駅徒歩約6分の1棟ビルに31本もの入札が集まった。その物件は土地が北東側で幅員約3.5mの公道に面した約40坪で、建物は築約16年の鉄骨造4階建て、延べ約86坪である。

 この物件の売却基準価格は1億15万円であったが、落札価格はその2.3倍強の2億3,790万円であった。この物件は所有者が占有しており、間取りは第三者賃貸用には不適かと思われる。商品化するには、建替えか大規模改装を必要とするだろう。したがって、落札価格は土地代だけと考えられる。そこで、落札の土地価格を見てみると、この土地にはセットバック部分があるので、それを考慮すると、1坪600万円を優に超えてくる。

 ちなみに、この土地の相続税路線価は1坪あたり約280万円である。したがって落札水準は、その2倍以上に相当する。この土地は第一種住居地域に属し、容積率は実質160%であり、繁華性は乏しい。それでも路線価の2倍の落札であり、再販するとすれば、2.5倍の1坪700万円程度の値付けにはなりそうである。

 この結果を見ると、不動産市場はまだまだ強気と言えそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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