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東京競売ウォッチ

2010年3月29日

第35回六本木の土地の再入札

 このところ期間入札の公告がなされた後の事件取下げが多くなった感じがする。とくに、人気エリアのマンションについて、開札日に近いところで取下げになるケースが散見される。これはおそらく中古マンションへの個人需要が市場において活発になってきていることと関連がありそうだ。

 一方で商業地に対する応札には、力強さを感じない。同じ日に開札になった日比谷線「六本木駅」徒歩1分の土地がわずか1本の入札で落札されたが、この土地は昨年10月に期間入札、特別売却とも応札なく、再度の入札であった。

 六本木通りに面するものの、間口が狭小で4mしかない延23坪の土地であったことからか、今回、売却基準価額とほぼ同額の1億4,160万円でようやく応札があった。しかし、変形土地とはいえ、このような立地で事業化に挑戦する会社が極めて少ないのは、昨今の商業ビルの賃料低下や、商業地の価格下落を大いに反映していよう。

 またこの日、東急多摩川線「矢口渡」駅徒歩3分に店舗兼共同住宅の1棟物件が開札になった。賃料が年900万円以上見込まれる物件だったが、売却基準価額3,4890万円に対し、入札10本が集まり、5,505万円で個人が落札した。

 鉄骨造とはいえ、築40年以上経過していることから、不動産会社は強気の入札価格設定ができなかったのだろう。

 個人需要には元気が出てきた感はあるものの、不動産会社は依然リスクテイクできない状況にあるようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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