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東京競売ウォッチ

2011年10月11日

第110回 低グロス競売マンション

 9月27日開札における1番人気は都営新宿線「篠崎」駅徒歩約9分に立地するマンションであった。築12年で、間取りは3LDK、専有面積は約19坪で、売却基準価額は1,379万円である。

 この内容に対し、入札は29本入り、最高価2,416万円弱にて再販業者が落札していった。

 さて、この落札されたマンション、同棟内の同じ大きさ、間取りで、かつ所在階が1階上の内装済みの部屋が、2,800万円にて昨年11月に成約している。

 そこで、もし競落された部屋が同価格で販売されたとした場合の再販利益を考えてみた。競売物件取得のコストは、まず通常物件と同じく登録免許税と不動産取得税があり、これは本物件だと約50万円である。これに部屋の内装工事代を表装交換として専有面積1㎡あたり1万円ほどの予算として、約60万円を計上する。

 さらに、競売特有の経費として1つ滞納管理費があるが、これは本物件にはない。加えて占有者の排除コストがあるが、これについては所有者居住・引渡命令対象でもあり、示談金や残置物処理などに30万円予算計上。ここまでの合計で商品化コストは140万円になる。

 これに販売手数料などの経費を考慮すると、利益は約160万円で、もし金融機関からの借入金利コストがあれば、純利益は100万円以下、原価に対する利益率にすれば3%程度しか得られない公算である。相場が10%でも下落すれば、赤字のリスクさえある。

 低グロス競売マンションは、薄利前提でなければ競落できない現状にある。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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