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東京競売ウォッチ

2025年07月29日

第754回 住宅ローン利用の民泊物件の競売

 このところフラット35を利用させ高値でマンションを購入させ、これを賃貸運用していたマンションが次々と競売市場に出てきている。そしてこの住宅ローン不正利用はマンションに限らない。

 7月9日開札では東武伊勢崎線「曳舟」駅から徒歩約6分の一戸建てが競売対象であったが、これも住宅ローン不正利用である。しかもこの戸建ては民泊に利用されていた。この物件の土地は約19坪で、建物は木造2階建で延床面積約25坪である。建設されたのは5年前であるが、当初から間取りが一般居住用のものではなく、宿泊施設用を想定しているように見える。実際にこの物件を新築時に購入した債務者は住宅ローンで売り主から取得後、すぐにその売主に賃貸している。そして売主はこの物件で旅館業営業許可を取得し、民泊運営を行ってきたのである。居住用マンションよりもさらに大胆な住宅ローン不正利用である。この物件の売却基準価額は3957万円であったが、これに対し11本の入札があり、最高価6420万円弱にて競落された。

 この物件民泊運営時には月額41万円にて所有者から賃借していたようで、それを考えると今後も民泊運用するとなると、所有者は年間で50万円近い賃料が得られる可能性がある。競落後は堂々と民泊ができるわけで、かなり高利回りの物件とも言えよう。

 しかし、この住宅ローン不正使用はかなり広範に行われたようだ。今後も住宅ローン実行時に居住用であることをよく確認し、実行後も債務者の居住実態を定期的に確認しないと引き続き行われることになるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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