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東京競売ウォッチ

2012年8月7日

第147回 昭和44年築、南青山のマンション

 分譲マンションは昭和40年くらいから出現している。初期の頃には、区分所有法が制定されて間もない状況でもあり、権利関係に問題がある物件もある。

 7月19日開札対象の中に港区南青山に立地する敷地利用権が借地権のマンションがあった。このマンションの築年は昭和44年で、専有面積約17坪の1LDKの部屋である。

 売却基準価額は1,505万円で、買受可能価額は1,204万円であった。この立地にして、買受可能価額ベースで、専有面積坪単価は70万円程度と、かなり安い。しかし、応札はわずか1本で、それもほぼ買受可能価額の1,204.1万円であった。月額賃料は、20万円近くも考えられるところから、管理費等を考慮しても、競落価格は実質利回りが優に10%を超える水準であろう。

 競落したのは個人で、再販業者の入札は1本もなかった。これは、敷地面積の問題によるところが大きいように思う。借地権の対象である敷地面積が登記簿上は171㎡強であるのだが、賃貸借契約上では、その2倍を超える377㎡強なのだ。実際は広い方の377㎡強に近い広さではないかと推量されているが、定かではない。

 このマンションの分譲当時では、敷地の境界確定や、地積更正などは行わないことがあり、それでも分譲が可能であったようだ。

 現在この状態であると、多くの住宅ローンが不適用であろうから、再販業者も手を出せなかったのだろう。また将来建替えが行われるようなことがあった場合も、この問題は大いに問題になりそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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