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東京競売ウォッチ

2025年01月21日

第729回 2024年東京地裁競売市場の総括(2)

 先週の本欄では2024年東京地裁本庁の競売市場は競落率の微減、競落価格の売却基準価額への上乗せ率の低下を紹介した。そこから2024年は過熱状態だった市場の転換の兆候が表れた年であったと言えるだろう。

 さて2024年の競落事例で特徴的だったのは1つにフラット35などの住宅ローンの不正利用に端を発した競売が目立ったことである。若者を中心に市場価格より極端に高い価格で、住宅ローン借り入れで購入させた上、賃貸にして運用させるといういわば詐欺商法の挙句での競売である。この競売は2025年も引き続き出現すると考えられる。むしろ融資銀行の債務者への一括返済要求が増え、競売申立てが増加することも考えられる。

 グラフは東京地裁本庁の2024年配当要求終期の公告件数の推移を表している。これは競売開始による差押えの件数でもある。2023年は1年を通しての総数は911件であったが、2024年は924件と、僅か13件ながら3年ぶりに増加した。ここから類推すると2025年の競売対象物件数は2024年とほぼ同じ水準になるように思える。ただし、僅かながらも増加の兆しがあり、年前半に先の住宅ローン詐欺由来の競売申立てなどの件数が増えてくると1年の競売物件総数が上昇する可能性は十分にある。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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