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東京競売ウォッチ

2012年3月6日

第126回 人気の法定地上権付建物

 競売物件の中に、法定地上権付建物というものがある。東京地裁本庁で1年に10物件あるかないかと、少ないが、それでもたまに見掛ける。

 2月9日には東武東上線「上板橋」駅徒歩約13分に立地する古アパートが、この法定地上権付建物であった。

 法定地上権とは、抵当権設定時に土地の上に土地と同じ所有者の建物が建っていた場合で、競売により土地、建物がそれぞれ別々の所有者になってしまった時に発生する。建物の所有者には敷地の利用権として地上権が付くことになる。

 地上権は物権であるので、第三者への売却が地主の承諾なしにできるなど、強い権利の借地権である。

 ところで、法定地上権付建物の競売がどのような経緯でできるのだろうか。金融機関が土地建物のうち、わざわざ建物だけに抵当権を設定し、融資することは、あまり考えられない。

 実は土地、建物両方抵当権を設定した場合でも、土地の売却をせず、建物だけ(地上権付)で競売に付する場合がある。それは「超過売却」と言って、債権額に比して、競売物権の価額が大き過ぎるときに生じる。こういったとき、抵当権の対象のうち、その一部を競売できるのであれば、債権額に見合った部分しか売却を裁判所が認めないことがあるのである。

 先のアパートも、債権者である銀行は土地、建物双方に抵当権を設定していたものの、裁判所は、その債権額を鑑み、土地を除き、法定地上権付建物しか競売を認めなかったようだ。

 結果は、売却基準価額624万円に対して、入札11本が集まり、最高価1,201万円にて競落されていった。

 地主の譲渡承諾も不要の借地権である法定地上権、権利が強いことで、人気が集まるようだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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