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東京競売ウォッチ

2011年10月4日

第109回中目黒の古家付き土地18坪

 昨週は本欄にて世田谷の戸建用地に多くの入札が集まった事例を紹介したが、同じ開札日には今年最高の入札本数を集めた物件もあった。

 その物件は東急東横線「中目黒」駅徒歩約4分に立地する物件で、土地が南西側で幅員5.5mの公道、北西側で幅員2.5~3mの2項道路(私道)に面する角地で、面積は約18坪ある。そして、この土地上に築古の建物が建っており、事実上、土地のみの売買と考えられる。

 この物件の売却基準価額は2,497万円であったが、これに対し入札が63本あり、最高価6,301万円にて落札されていった。

 この土地には1坪程度のセットバックがあるため、正味では約17坪と考えられるところから、1坪あたり370万円という水準での落札であった。この土地の正面路線価は1坪あたり約165万円であるため、路線価の2.2倍強の水準である。かなり高額に思えるが、近隣商業地域に属し、容積率も300%ということから、商業地としての価格水準になった。

 また、この土地上の建物には所有者の家族が住んでいるものの、所有者は死亡し、実質は相続財産管理人たる弁護士の占有管理下にある。相続財産管理人に対する占有明渡し交渉なので、任意明渡しが円滑に進むものと考えられたのも、大量入札があった一因かもしれない。

 それにしても、多くの入札が集まったのは震災後の不動産マーケットの回復を表しているようにも思う。

 ちなみに、相続財産管理人は、死亡した債務者の相続人がすべて相続放棄を行った場合につき、債権者が申立、家庭裁判所に選任してもらう。債権者はそれにより、その相続財産管理人宛に競売の申立を行うことになる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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