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東京競売ウォッチ

2022年11月29日

第627回 大森の戸建て170%超の上乗せ落札

 競売になる理由として、親族間の諍いい端を発することも多い。2022年11月9日開札では大田区所在、京浜急行「平和島」徒歩約8分に立地する土地建物が対象になった。土地は北側で幅員6mの公道に面した約120坪でここに古家が建っており、共有者の一人が占有している。さてこの物件の登記情報を見ると、競売に至った経緯が大筋分かる。そもそも事業を営んでいた元所有者が逝去し、妻が半分を相続するも、その後逝去。その持分を元所有者の子供の一人(現在の占有者)が全部相続したところ元所有者の子供たちから遺留分減殺請求権を行使されている経緯が読める。5人の子供たちでの共有になるも、そのうち1人が占有していることもあり、売却換金が進まなかったと見られ、兄弟間での係争に発展したのだろう。結局共有物分割請求訴訟となり、今般の競売に至ったと考えられる。

 そんな競売までの経緯であったが、土地としての魅力が高かったのだろう。売却基準価額1億184万円に対し入札は21本入り、最高価2億7500万円にて不動産業者が落札していった。実に売却基準価額の約2.7倍であり、土地相続税評価の約2倍の水準であった。容積率も240%とれ、建売用地として好都合であったことも高水準競落の要因だろう。好立地の競売物件はこんな換価競売の占める割合が多い現状である。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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