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東京競売ウォッチ

2020年6月2日

第512回 公売はリスク高、参加に注意!!

 競売が新型コロナウイルスで入・開札が延期になっているが不動産公売も同様東京国税局などは停止状態にある。この機会に不動産公売について所見を述べたい。さて不動産公売の参入障壁として挙げられるのは買受人に対する法的なバックアップ制度が競売と違って無いことにある。買受人に対抗できない占有者に対しては「引渡命令」という制度があり、通常の明渡訴訟の裁判では無い、いわば簡便・迅速な裁判によって明渡の強制執行を可能にするお墨付き(債務名義)を得ることができる。

 しかし不動産公売にはこの制度がないので、買受後占有権が無い占有者に対し任意の明渡交渉が成立しない場合は通常の明渡訴訟を提起し、その勝訴判決をもって明渡の強制執行を行わなければならないのである。このように買受人にとっての占有確保のリスクが競売に比し格段に高い上さらに厄介なのは占有状況が不明な場合が多々あるということである。

 不動産公売に付された不動産の占有者の占有権限は当然不動産の所有者(税滞納者)には無いが、賃借人の場合はどうだろうか。結論から言えば滞納による差押登記より前に賃貸借が開始されていれば買受人はその賃借権を引き継がねばならない。逆に差押以後の賃借人には買い受け後速やかに明渡を請求できるのである。入札対象物件に賃借人がいる場合、賃貸借の開始時期は買受人にとって大変重要な情報である。

 しかし公売不動産の中には賃借人が占有しているもののその占有開始時期が不明なものがある。さらに言えばその使用状況そのものが不明であるケースさえあるのである。買受人にとって占有関係のリスクが競売よりはるかに大きいのである。従って入札参加する者は競売に比して相対的には少ないのが現状である。しかし競売不動産が激戦であるところからリスク承知での公売参加者は増加するだろうと思われる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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