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スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2009年7月27日

第2回 競落水準はここ数ヶ月で大きく上昇

 マンションへの大量入札の事例を最近本欄でも多く紹介しているが、先日筆者の会社で本年上半期の東京地裁(本庁) の競落データを取りまとめたところ、落札企業上位に今まで見なかった会社が多くランクインしていることがわかった。

 競売市場に目を付け、新規市場参入してきている会社が増加したようだ。

 一方で競落水準を表す競落価格の売却基準価額に対する上乗せ率は、今年上半期マンションについて26.61%であった。 これは昨年の上半期の40.94%より大幅にダウンしているものの、昨年1年通期の24.96を上回っている。このことは昨年後半に 落ち込んだ競落水準がここ数カ月でかなり上昇したことを表している。

 また、競落物件1物件に対する入札本数については、昨年下半期平均で5.36本であったものが、今年上半期は8.13本になった。 この数字は昨年上半期の7.13本を凌いでいる。

 昨年リーマンショックの後、低い水準で競落されている状況に目を付けた新規参入業者の増加が、 結果として従前よりも落札競争を激化させたようだ。

 一方、こうした競売マンション落札好調の中で、先週イースタンクリエイト社という競売中古マンションの再販業者が自己破産した。 同社は一昨年、東京地裁(本庁)で20物件落札し、落札上位にランクされていた。しかし、昨年秋以降の再販不振により破綻に 追い込まれたようだ。

 仕入れを強化するあまり、落札価格が上昇し、再販不振による破綻は過去にも何社も見てきたが歴史は繰り返しているようだ。

 また、かつて競落・再販の会社トップであったアトリウム社が久々に今年上半期、同社の関連会社であるサービサーを含め、 30物件もの競落をしていたが、これは同社の不良債権回収のための自己競落が主であった。

 これも市況の激変を象徴する結果であろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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