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東京競売ウォッチ

2013年7月9日

第188回 「超過売却」による一部売却

 不動産競売は民間の金融機関の債権回収手段であるが、申し立て債権者の債権額が差押えした不動産の評価額に対し、低い場合もある。このとき、裁判所の判断によって、差押えした不動産の一部のみを競売に付する場合がある。

 これは、「超過売却」による一部売却と言われるものである。ここで裁判所の判断として土地付建物の場合、法定地上権付建物と、その底地いずかを売却する場合がある。

 通常の不動産取引においては、こういった不動産の分け方はあり得ない。しかし、競売においては、民事執行法上「超過売却」ということになって行われる。

 6月13日開札で、西武池袋線「保谷」駅徒歩約15分に立地する一戸建ての法定地上権の底地が競売対象になった。土地は西側で幅員4mの公道に面する約25坪であるが、その売却基準価額は297万円であった。

 これに対し入札が5本あり、最高価457万円強にて競落されていった。法定地上権が設定されている土地、いわゆる底地は、当然自ら利用できないわけで、法定地上権付建物の所有者に対し、地代を請求することによる収益が見込めるだけである。

 この土地の固定資産税・都市計画税が約34,500円であることから、年間の地代は17万円前後と推察される。競落価格に対しては、年3.7%程度であり、収益利回りとしては、決して魅力が高いとは言えまい。

 おそらくは本件底地競落後、建物所有者と協議して、全体の同時売却、もしくは建物の買取った上の再販などを競落者は考えているのではないだろうか。

 他に共有持分のみの売却などの特殊物件が競売には見られるが、法定地上権の底地は珍しい。今回、5本もの入札があったのには驚かされた。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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