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東京競売ウォッチ

2014年11月18日

第255回 過熱市場と化している東京地裁

 対象物件数の減少と、競落率の高さからこれまでにない過熱市場と化している東京地裁であるが、これを象徴しているのが、借地権付建物が競落状況である。

 10月23日も借地権付建物は5物件あったものの全て競落されている。

 そのうち最も入札が少なかった物件でも2本入ったが、その競落結果に目を引かれた。

 その物件は、当該借地権付建物の敷地所有者である、地主が入札参加したものの、第三者が入札し、落札してしまった。おそらく敷地所有者は、他に入札する者はいないであろうと思っていたと考えられる。

 この物件、敷地は面積こそ44坪あるものの、三角形の変形地で、建物はかなり老朽化した木造家屋のため、現状ではとても利用できないと思われる。そういう条件でありながら、売却基準価額は比較的高い1,463万円であった。これは、この物件が準幹線道である幅員18mの公道に面し、また借地権割合も7割であるということからである。

 競落したのは個人で、競落価格は1,628万円であった。たぶん接道条件が良いことから、建替え利用に妙味を感じたのであろう。地主は次順位で1,485万円であった。

 今後、地主としては、借地権名義変更について承諾料を収受して、それを認めるか否かを決めることになる。名義変更を認めなかった場合、競落人が裁判所に譲受許可を申し出ることになるが、この場合、地主は「介入権」を行使して借地権の買取ることも可能である。

 いずれにしろ地主が期間入札で入札した経緯を考えると、すんなりと借地権の名義書替について話がまとまるかは不透明だ。過熱市場では、こういった借地権付物件にも応札が出てくるのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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