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東京競売ウォッチ

2025年05月27日

第745回 文京区の土地建物 売却基準価額の2.8倍強で競落

 5月15日開札の対象物件は事件記録閲覧後の取下・延期が7物件あったこともあり、開札となった物件数は20物件を下回る18物件と少なかった。

 その中で一番人気となったのが、文京区本郷6丁目所在で本郷通りに面する立地の土地建物であった。東京メトロ南北線「東大前」駅から徒歩約5分と駅近立地でもある。土地は約35坪で、その上に築古の木造住宅が建っており、所有者占有となっている。従って本件入札者は建物を解体除去し、更地にする前提であろう。

 この物件の売却基準価額は1億674万円であったが、これに対しこの日一番の25本の入札があり、売却基準価額の2.8倍を超える最高価3億310万円にて不動産会社が競落していった。これは土地1坪換算866万円で、建物解体コストなどを考えれば900万円近い取得水準である。

 ただこの土地は本郷通り面であり、路線価は1坪約433万円である。これからすると競落価格は路線価ベースの2倍強ということであるので、地価上昇率が高い文京区であれば、決して高い水準ではないように思う。容積率は600%の土地であるので、容積率100%(一種)あたりの価格は150万円であり、近隣のマンション価格を考えれば、むしろ安い感じもする。

 ただこの物件、対象建物が隣家と接着していることや、隣地に跨って建設されていることがあり、売却基準価額もそれを考慮してかなり低く設定されていた。従って競落者にはこの辺の権利関係の整理にコストが掛かることは覚悟しなければなるまい。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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