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東京競売ウォッチ

2013年12月3日

第208回 中古マンションに強気の競落

 建築費の上昇がよく取り上げられるようになった。資材もそして人件費も上がり、新築マンションの原価は用地確保難と併せ上昇傾向にある。そんな先高感があるマンション市場では、中古物件も取引が活発化し、品薄感も出てきている。

 その傾向は競売市場にも及んでいて、強気の競落水準が目につくようになってきている。11月8日開札で都営新宿線「浜町」駅徒歩約6分に立地した築9年強で、専有面積約12坪の1LDKの部屋に入札28本が集まった。

 そして、何よりその競落水準が高いことに目を引かれる。売却基準価額は964万円であったが、これに対し、最高価は2,358万円で、売却基準価額の2.4倍強、上乗せ率145%弱であった。

 この物件、滞納管理費が160万円ほどあるので、取得総額は2,500万円を超える。一方で収入は現在の賃借人の賃料が共益費込で月額14.8万円。ここから管理費等、固定資産税等を差し引いた実質年間約135万円である。したがって、年利回りは5.5%程度であり、決して優位性を感じない。また、この物件の競落価格の専有面積1坪単価は210万円近くで、この周辺の同程度の中古マンション販売坪単価に比しても、1~2割程度の割安感しかない。

 さらにこの日、このマンション以外に9物件が売却基準価額の2倍以上の競落価格であった。中でも京浜急行空港線「穴守稲荷」徒歩約18分のマンションが足回りが悪いにもかかわらず、売却基準価額(707万円)の2倍超で競落されている。

 これら高水準での競落は中古マンションの買取り対象住戸の在庫不足と、再販価格の強気観測を背景にしているように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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