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東京競売ウォッチ

2017年7月18日

第377回 掘削承諾が手間?王子の変形土地

 全国で所有者不明の土地が410万ha、それは九州よりも大きいという報道に驚かされた。放置された土地は全国に大量に生じている。しかし、東京のような密集する大都市には、多くは見かけない。しかし、6月22日に開札対象となった土地は、JR京浜東北線「王子」駅徒歩約10分という立地にも拘わらず、永年近所の共用地のように使用されていた。

 その土地は広さ約24坪あるものの、逆コの字の形をしていて、へこんだ部分は対象外の井戸になっている。競落後も建物のプランを入れにくい変形地である上、接面道路は北側、西側それぞれ私道の2項道路で、幅員も2m前後なのでセットバックがかなり必要だ。

 そんな条件であるこの土地の売却基準価額は1388万円で、1坪当たり60万円に満たないが、入札本数は5本に止まり、最高価1702万円にて不動産業者とみられる会社が落札していった。おそらくは建売事業を行うのであろうが、その際には先に記した井戸との関係をどう処理するか、そしてもう一つは水道管やガス管の新設に関しての問題である。

 埋設管は私道に敷設を新たに行う場合には、それに対し、他の多くの私道所有者の掘削同意書を取り付ける必要が生じる。本物件についてはかなりの数の方の掘削同意を取得する必要がある、事業者はかなり手間を取りそうな状況である。そんなこともあり、立地の割に上乗せ率がさほど高くなかったのではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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