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東京競売ウォッチ

2016年7月5日

第329回 共有持分で分譲した事務所ビル

 競売不動産には1つの不動産の共有持分が対象となる場合も見られる。1つの土地や建物の共有持分が競売対象となる場合は、相続分割協議が不調に終わり、競売により換価し、分配するためのものが多い。

 しかし、6月9日開札では、1つの土地建物を共有持分にて分譲したものが競売になったケースがあった。その物件は東京メトロ副都心線「北参道」駅徒歩約7分に立地する事務所ビルである。土地は北側で幅員約5mの公道に面する約25坪で、建物は鉄筋コンクリート造地下1階付4階建て、延床面積が約80坪である。

 この建物は平成元年6月に竣工しているが、当時の売主が投資物件として共有持分を分譲した。今回競売対象となった共有持分は76分の1であり、売却基準価額が170万円であった。

 この物件は1棟全体を月額108万円にて賃貸していて、共有者に対しては、1棟の固定資産税・都市計画税ほか経費を控除した分配金を管理者が支払う仕組みとなっている。本物件については月額15,800円弱である。年額にすると約19万円の配当になるので、売却基準価額に対しては年11%強の利回りになる。そして入札の結果は8本入り、最高価333万円にて落札された。年利回り5.7%相当額である。

 こういった物件は今ではあまり見られないが、この物件が建てられたバブル経済時は散見されたものである。当時は銀行融資も、こういった物件にもなされ、買い手がついた。しかし、バブル崩壊後は銀行が担保として評価しないこともあり、流動性が低くなった。都心のミニバブルとも言えそうな昨今、再びこのような物件にも応札がなされるようになった。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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