リアナビ

スペシャリストの眼

東京競売ウォッチ

2022年5月31日

第603回 浅草の件外建物ありの商業地が一番人気!!

 競売対象の土地に敷地利用権の無い建物が存在する場合がある。この建物を「件外建物」と言われる。その競売対象の土地を競落した者はこの件外建物を競落後、件外建物所有者に取り壊し(収去)し土地を明け渡すよう求めることができる。ただし、この場合競売の建物占有者に対し行える「引渡命令」をもって強制執行することはできない。任意での明渡し交渉が成立しなければ建物収去、土地明渡訴訟を提起する必要がある。

 5月19日開札では台東区浅草3丁目に立地する件外建物ありの商業地が開札対象となった。土地は幹線道路(言問通り)に面した34.6坪で、そこに築51年で鉄骨造2階建ての延べ床面積約61坪の建物が建っており、所有者は競売対象の土地共有者の一人である。この土地の売却基準価額は4245万円であったが、これはこの件外建物があることによる減価が施された金額である。その減額は建物が存する「場所的利益」として土地評価額の20%相当額(金額にして約1900万円)である。

 これに対し入札はこの日最多の28本があり、最高価1億3500万円にて競落されていった。この競落水準は1坪約390万円で、相続税正面路線価の約1.7倍に相当する。確かに更地であれば商業地でもあり、割安感がある。しかしながら先述の件外建物収去を要するので、それを考慮すると割安感は薄れる。それであっても売却基準価額の3倍を超える競落となるあたりは土地相場が高い現在の状況を表している。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


BackNumber

コラム一覧

山田純男 東京競売ウォッチ

2024年05月14日



Copyright (c) 2009 MERCURY Inc.All rights reserved.