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東京競売ウォッチ

2018年5月8日

第412回 品川のマンション価格補正でも高上乗せ率

 先週本欄で、マンションの評価書中、積算価格を算出する折、周辺取引を勘案して価格補正を施してきていることを伝えた。これにより競落価格の売却基準価額への上乗せ率が低下傾向にある。しかし、積算価格算出で市場取引価格補正するというのは違和感が拭えない。それは本来、取引価格比較法というアプローチで別途算出されるべきものではないだろうか。まさに羊頭狗肉といった手法に思える。

 4月12日開札で32本の入札を集め一番人気となったのは都営浅草線「中延」駅至近に立地する築15年弱のマンションであった。専有面積約15.2坪の2LDKで売却基準価額は2400万円であったが、競落されたのは3903万円で、上乗せ率は62%を超えた。このマンションも評価書では積算価格算出過程でプラス25%の価格修正を行っている。この25%がどのように導き出されたのかは特に触れられておらず、成約事例などの掲示も無い。まさに主観的な調整でしかないように見える。

 結果はこのマンションについてはそれでも高水準で競落されている。競落水準が評価人の主観的裁量で変化してしまうのはいかがであろうか。類似物件の取引事例を呈示し、取引事例比較法による価格を別途算出する方が、入札者にとって分かり易いように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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