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東京競売ウォッチ

2010年9月28日

第59回池上駅歩2分の更地

 競売市場では、開札の直前においても任意売却により取下げになるケースが多くある。債権者が競売申立を行い、売却基準価額が出ると、債権者も最低の回収金額が把握できることもあって、より任意売却が進みやすいことがある。

 9月14日開札でも、27物件も事件記録の閲覧開始後に取下げになっている。任意売却による取下げがなされやすいのは、抵当権者等が少ない物件である。競売での売却と違い、抵当権者等が全員抹消に同意しなければ、成立しないのが任意売却である。

 逆に抵当権者等の数が多く、また税金の差押があるようなケースは、抹消の合意形成が難しく、結局競売に突入することが多い。また、売却価格の公正さを担保するため、競売という公開市場での売却を行う場合もある。

 9月14日開札で東急池上線「池上」駅徒歩2分の更地が競落された。この土地の広さは約47坪で、幅員15mの「池上通り」に面する整形地で繁華性が高い立地でもある。

 入札の結果は売却基準価額8,824万円に対し、10本の応札があって、最高価1億2,050万円で隣接する病院が競落していった。

 この病院は、この土地を所有することになれば、既存所有土地の価値は増す。他の入札者にはないメリットがある分、高い入札価格が付けられた結果、落札できたと言えよう。

 しかし、おそらく競売での売却の前にも病院には任意売却の話はあったはずである。それでも、結局競売になった要因として、債権者が破綻したSFCGであったことが考えられる。公正な売却が必要だったのではないだろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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