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東京競売ウォッチ

2014年9月16日

第246回 対象物件の減少続きバブル期並み

 競売対象物件の減少が続いている。先日当初予定されていた8月28日開札がなくなり、9月11日開札分に吸収される形になった(したがって8月の開札回数は1回のみである)。これはまさに対象物件の減少を表す出来事であろう。

 昨年(2013年)は弊社の統計によれば、東京地裁本庁では1,693物件が開札対象になった。一方で一昨年(2012年)における東京地裁本庁が行った配当要求終期の公告の件数は2,604件である。配当要求終期が行われた物件は、その後、任意売却による取り下げなどがあるので、おおよそ4割程は競売市場から姿を消すことになる。それを考えると、一昨年の配当要求終期の公告件数の約65%が昨年の開札対象であったので、ほぼ辻褄が合う。

 そして、昨年の配当要求終期の公告件数がどうであったかを見てみると、2,156件であった。したがって、今年の東京地裁本庁の開札対象物件数は1,300~1,400物件に止まるのではないかと推量される。この水準はかつてバブルで経済が絶好調であったときと同様である。

 ところで、2014年上半期の企業倒産件数は多くの業種で前年同期間を下回っていると関係機関が報じている。消費税増税前の駆け込み需要による売上げ伸長がその原因の一つではあると考えられる。しかし、昨年3月に終了した「中小企業金融円滑化法」後も銀行等が救済企業に対し、引き続き返済リスケなどを行い、不良債権整理を行っていないことが一番の要因ではないかと思われる。

 さらに、現在の低金利状態もその背景にあるのではないだろうか。低金利は金融機関の新たな資金需要開拓が進んでいない実態の表れでもある。リスケ債権であろうと金利収入があれば、そのままとしておいた方が、収益が上がるということなのだろう。

 この状態はいつまで続くのであろうか。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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