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東京競売ウォッチ

2013年9月3日

第195回 ますます過激な入札状況

 競売市場はますます過激な入札状況にある。

 8月1日開札の結果を見ると、マンションに関しては、競落1物件あたり17本を超える入札があり、20本超えの入札本数も珍しくない。

 この日の1番人気のマンションは、JR埼京線「十条」駅徒歩約2分に立地する築12年で、専有面積約19坪の3LDKの部屋であった。

 この物件の売却基準価額は1,663万円であったが、これに対し57本もの入札があり、最高価3,012万円強にて再販業者が落札した。

 さて、このマンション、本年4月に別の部屋(6階に存する1DK、専有面積11坪強)が販売・成約しているが、この時の成約した1坪単価は188万円弱である。この時を参考にこの部屋の再販価格を類推すると、3,600万円弱になる。

 ところで、この部屋の現況調査報告書には、占有者が執行官の呼び掛けに応じず、止むなく室内調査のため技術者が開錠した様子が記載されている。開錠し、執行官が入室すると、そこにはこの物件の所有者がいたのである。

 こういった占有者相手の明渡交渉は競落後も接触がとりにくく、進みにくいことが多い。したがって、明渡強制執行の手続きをとらざるを得ないこともある。

 さらに室内写真を見ると、かなり荒れていて、補修等がかなり必要とも推測される。

 明渡のコストや室内改修工事のコストを考慮した場合、3,000万円を超える落札価格では、先の成約事例に準ずる再販価格だとすると、採算的にはあまり余裕がない。

 おそらくは中古マンションマーケットを強気に見て、さらに高い価格での再販もにらんで落札したのであろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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