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東京競売ウォッチ

2013年4月23日

第178回 奥沢の共同住宅に入札47本

 先週の本欄で、不動産事業者の強気の入札が都心において目立ってきていることを伝えたが、山の手住宅地に対しても強気の入札が行われ始めている。

 3月26日開札で一番人気となったのは、東急目黒線「奥沢」駅徒歩約4分に立地する共同住宅であった。土地は西側で幅員約5.5m、北側で幅員約5.2mの各公道に面する80坪強の整形地であり、その上に鉄筋コンクリート造2階建て、延床面積約66坪の共同住宅が建っている。建物は2DKなど5部屋から成り、全て賃貸にしたとして、年収は約660万円と推定される。

 以上の内容で、売却基準価額は6,983万円であった。これに対し、47本もの入札があり、最高価1億4,560万円にて業者が落札していった。

 この落札金額であると、収益利回りとしては、表面でも年4.5%程度しか回らない。したがって、落札した業者は建物を取り壊し、建売住宅用地として、事業化を考えているように思われる。

 整形地ゆえ事業化しやすいとは思うが、占有者の明渡コストや、建物の取り壊しコストを鑑みると、1坪単価250万円程度では再販しなければならないだろう。入札価格設定はやはり強気と言えるだろう。

 ただ一方で、マンションについては、物件によって、入札本数が大量であっても、落札価格は、それに比して小さい例も見られる。

 とくに郊外型ファミリー物件の中に、そういったケースが多いように思われる。これは、都心商業地や、高級住宅地など、アベノミクスで値上がり傾向にあるものの、一般庶民の購入対象である郊外の中古マンションまでは、その効果が及んでいないということなのかもしれない。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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