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東京競売ウォッチ

2011年4月18日

第87回震災後の入札で初の開札

 震災によって、建築資材・設備の不足が起きている。震災復興のために需要が急増していることや、東北地方にあるメーカーの工場が被害を受けていることに原因があるようだ。

 これによって新築分譲マンションも工事進捗への影響などから、販売計画を遅らせる例も出ていると聞く。

 中古市場においても、建材・設備不足の影響はある。それは物件のリフォームにおいてである。特にユニットバスや給湯器については不足感が強いという。リフォームも表装替えくらいの工事であれば、影響は小さいであろうが、大掛かりな修繕であると、商品化が遅れる可能性が高い。さらには工事代金の上昇も考えられ、原価上昇の要因にもなりそうだ。

 また、とくに築年が古く、設備を含むフルリフォームを必要するものについては、さらに仕入れ原価の上昇に注意が必要である。古い住宅については、地震の危険性から販売に影響が出ることが予想され、その面からも仕入れに慎重さが求められよう。

 そんな中、東京地裁で震災後に入札開始された初めての開札日でも、旧耐震基準のマンションがいくつか落札されていた。そのうち、落札価格がかなり低いので目を引かれたのが、京成本線「江戸川」駅徒歩約8分に立地するマンションであった。鉄骨鉄筋コンクリート造で、築38年を経過した建物の1階部分にある専有面積約13坪の部屋である。

 この物件、売却基準価額が186万円のところ入札7本が集まり、最高価250万円で落札された。かなり低い水準と思われるが、実は約400万円の滞納管理費等がある。さらに、この部屋は事務所仕様になっていて、商品化するにはキッチンやユニットバスの設置を要し、大掛かりな間仕切り工事も施さねばならない。

 建材・設備不足、そして耐震意識が高まる中、こういった物件の再販事業はより難しくなるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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