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東京競売ウォッチ

2014年12月22日

第260回 活況な収益不動産市場

 市場では収益不動産、とくに土地付共同住宅へのニーズは相変わらず強い。城西、城南地域の人気エリアに立地の物件は売り物件が不足している状況である。

 11月20日開札で1番人気であったのが、京王井の頭線「下北沢」駅徒歩約5分に立地する土地付店舗・共同住宅であった。この物件、土地は北東側で幅員約6mの公道に面する約31坪で、建物は築24年の鉄筋コンクリート造の地下1階付4階建て、延床面積が約89坪であった。地下1階が美容室で、1階に歯科医院が入る商店街の小規模ビルである。3階、4階の住居部分の見込賃料は年実質1,200万円程度であろうと推定される。売却基準価額が7,860万円であるから、これで取得できれば年15%を超える利回りになる。

 しかし、競落されたのはこの約2.5倍である1億9,395万円である。この競落価格をベースに考えると利回りは実質年6%程度になるだろう。

 また、この物件の地下1階と1階部分のテナントは最先の賃借権にて占有している。これに伴い必要な保証金返還債務が1,240万円ほどある。これを考慮すると、取得資金総額は約2億600万円になる。

 ところで、この物件の積算評価額はどれくらいであろうか。土地から考えてみると正面路線価が1㎡あたり55万円であるので、相続税評価額としては約5,600万円である。商業地域であることを考えて、この1.3倍を市場評価とすれば、約7,400万円となる。この価格はこの物件の評価書による正常価格評価7,230万円とほぼ一致する。そして、建物の方は評価書の数字約3,700万円を採用すると、積算価格としては1億1,000万~1億2,000万円ということになる。

 つまり、銀行の担保評価方法として従来多く採用される積算価格の2倍近い競落価格ということになる。金融機関も担保評価の考え方を活況な収益不動産の市場において、変化せざるを得なくなっているように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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