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東京競売ウォッチ

2023年10月24日

第671回 赤坂ビル債権者自己競落

 都心の地価は引き続き上昇傾向にあることで、都心の不良債権物件は大方任意売却で決着がつき競売に回ることは少ないと思われる。しかし、そんな中東京メトロ千代田線「赤坂」駅徒歩約3分に立地する商業ビルが競売になった。そのビルは土地が南側で幅員5.1mの公道に面した約32坪で、建物は築5年強の鉄骨造5階建、延床面積は約112坪であった。この物件の売却基準価額は4億3554万円であったが、これに対し入札16本が入り最高価7億8700万円弱で落札された。この競落水準であると土地の1坪単価は約2000万円程度と思われる。これは相続路線価の約10倍に相当する水準である。

 さて落札者は債権者であるサービサーの関連会社であり、実質自己競落と言える。そもそも所有者は登記情報から察するに平成30年に西武信金から8億1600万円程度借り入れたが、返済不能に陥り、債権をサービサーに売却している。そして債権を取得したサービサーは任意売却を成せず競売に付した。これは東京都の差押えが複数行われていることで、任意売却を進めにくかったことがありそうだ。また債権者側は自己競落を行い、その後転売する利益の方が大きいと判断したということもあるだろう。都心不動産の需要が強いことが、こういった自己競落を行わせたと言える。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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