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2017年8月8日

第380回 日本橋ビル、高水準落札も占有の複雑さがマイナス要因か

 7月20日開札では、東京メトロ日比谷線「人形町」駅徒歩約2分に立地する築48年の鉄筋コンクリート造のビルが対象となった。土地は北西側で幅員15mの公道に面し、建物は6階建てで延床面積約113坪ある。このビルでは古くからお菓子の製造販売がなされていて、営業継続中である。従って、建物は一部住居部分があるものの、お菓子の製造にかかわる作業所、倉庫などと、販売店舗になっている。

 作業所にはお菓子製造の機械類が多く設置されている。また、このビルのオーナーとお菓子の製造販売をしている事業者とは異なっていて、オーナーから賃借をして営業している形態である。しかしオーナーと事業会社は関係性の深いと思われ、従って賃料も月額23万円という低廉である。ただ物件明細書では、この占有会社は抵当権の後の賃借権に基づき占有しているものと認め、明渡猶予6か月対象者としている。このビルの競落者は、建替えを考えるとすれば、このお菓子製造・販売会社の明渡請求をすることになる。そこで示談が成立しなければ、6か月猶予期間後引渡命令を発令し、明渡の強制執行を申し立てることになる。その場合、設置されている機械類などの搬出等にはかなりのコストがかかるだろう。

 この物件の売却基準価額は6471万円で、入札が34本あり、競落価格は1億5500万円であったが、この占有関係によって競落価格は抑えられたのではないかと思われる。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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