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東京競売ウォッチ

2012年10月2日

第154回 寺務所が対象として登場

 競売市場には、珍しい種別の物件が登場することがある。9月11日開札では、寺務所が対象になった。

 その物件は京成本線「京成小岩」駅徒歩約4分に立地する土地建物である。お寺といっても小ぶりな物件で、土地は約19.5坪で、建物は鉄骨造3階建ての延床面積約45坪である。この中に本堂や寺務所があり、かつ住職と思わしき所有者の住まいもある。

 この物件の売却基準価額は1,818万円であったが、これに対し入札は5本あり、最高価2,015万円強にて競落されていった。

 ところで、こういった宗教関係の競売物件の場合、競落後の明渡しに伴う残置物問題が生ずるおそれがある。旧所有者任意にて残置物なく明渡してくれれば良い。しかし、結果として、明渡しの強制執行を行った場合、その残置物の中に仏具や位牌、仏像など残ることがあり得る。

 通常、占有者の残置物は執行官により、その場で、無価値物として処分対象とするか、搬出保管の上、動産競売にて処理する。

 しかし、仏具のような神祭具は、無価値物でも、動産競売対象でもない。結果として、競落人にその処分を執行官が託すことになる。

 競落人は、「焚き上げ」などの処理を寺院関係の専門家に依頼するよりほかない。特殊な残置物については、特別な処理方法を要する場合があるのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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