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東京競売ウォッチ

2011年4月11日

第86回震災直前に入札した物件

 今回の地震は不動産市場に少なからず影響を及ぼすものと考えられる。東北は目を覆わんばかりの惨状であるが、東京圏でも浦安の海岸側エリアなどで広範囲に、液状化に襲われ被害が甚大である。

 上下水道、ガスなどのインフラが大いに損害を蒙った。今後復旧はされていくだろうが、この地域の不動産価値については大きな影響が生じるであろう。

 ちなみに、新浦安の人気物件である「浦安マリナイースト21」が震災直後の千葉地裁の3月23日開札において、入札本数7本で売却基準価額の2倍を超える価格で落札されていた。

 震災直後でも、入札が結構あると思われるかもしれないが、この開札日の物件の入札開始日は3月9日であり、震災前なのである。おそらく入札は震災前になされたものではなかろうか。東北も津波の被害があった競売物件が震災前に入札され、震災後に開札となったケースもあるであろう。

 東北の場合で、津波によって明らかに物件が損傷されてしまえば、売却許可は取り消ししてもらえると考える。ただ、浦安の物件の場合、物件そのものに損傷がなければ、周囲の道路等の液状化という事実だけでは、売却許可の取消は認められない公算が大きいように思う。

 落札者としては、入札保証金の放棄か、そのまま取得し、再販するか、その損得勘定と決断を迫られることになろう。震災はこんな形でも影響を及ぼす。

 また、もう一つ、東京の物件であっても、特に築年が古いものについては、共用部分の損傷などが、この震災で生じたものがある可能性がある。

 震災前に入札し、落札した物件で代金納付前のものについては、納付前に十分に物件状況を確認する必要がありそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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