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東京競売ウォッチ

2015年5月12日

第276回 乃木坂の築37年、区分事務所

 近年、不動産取引において反社会勢力の介在を排除する方向で業界も強く指導されている。また宅建業者は、物件の販売契約や重要事項説明書などには暴力団事務所の有無などについて、説明を課せられている。

 4月23日開札で、東京メトロ千代田線「乃木坂」駅徒歩約4分に立地する、築37年を経過した専有面積約54坪の区分所有事務所が開札対象であった。

 そして、この物件は近隣に暴力団事務所などの存在が噂されていて、執行官がマンションの管理員や警察に事情を聴取したが、結果として確定的なことは不明となっている。そんな状況であるが、売却基準価額3,859万円に対し、入札10本があり、最高価8,039万円にて競落されていった。再販時には先述の反社会勢力に関する説明リスクがあるものの、高い上乗せ率で落札されている。

 ちなみに、この物件の評価書上では、約26年前に同物件内で不自然死があったこと等による10%減価が施されている。この点についても再販売する場合には、知っている情報として、購入者には告知しなければならない事項であろう。

 さらに加えて、現在の占有者が漏水改善工事に多額の金額を負担していることも主張しており(裁判所は有益費とは認定していないが)、明渡しについてはすんなりいかない可能性はある。

 物件に問題を複数抱えていても旺盛に入札が入る市況なのである。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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