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東京競売ウォッチ

2015年3月3日

第267回 投資用のファミリーマンション

 収益目的のオーナーチェンジマンションは単身者用ワンルームマンションが需要の中心であり、ファミリーマンションは、あくまで買って住む、実需向け販売が主である。これはワンルームマンションの収益利回りが良いことや、テナント退去後のリニューアルコストが低いことなどの理由がある。さらに投資総額がワンルームの方が低いことや、購入時のローンも、投資用としてはファミリーマンションに関しては付きにくいことがあった。しかし、このところファミリーマンションに対する投資用ローンもノンバンク中心に利用できる。

 2月5日開札では、最先の賃借権付のファミリーマンションに多くの入札が集まり、高上乗せ率で競落されたことに目を引かれた。その物件は東武東上線「下板橋」駅徒歩約4分に立地する専有面積19坪の2LDKの部屋であった。売却基準価額501万円のところ入札が29本集まり、最高価1,539万円強で業者が落札していった。

 さて、この物件の賃借権は月額賃料が12万円で、オーナー負担の管理費・修繕積立金は月額24,000円、そして固定資産税・都市計画税は年額6万円強であるので、年収は110万円弱になる。この物件に滞納管理費はほとんどないようなので、競落価格では実質年利回り7%前後になろう。

 ところで、この物件は築40年を超える古い物件であり、また敷地が建築確認申請時と異なることから、建物自体が容積率オーバーになっているようだ。さらに、専有部分については上階からの水漏れやエアコンの故障なども指摘されていて、購入後は修理コストがかさむ可能性がある。それでも大量の入札があるところから、ファミリーマンションのオーナーチェンジマンションも立地次第で需要が大きくなっているのだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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