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東京競売ウォッチ

2016年9月6日

第337回 新御徒町、築32年のマンション

 8月4日の開札では先週紹介した「中銀カプセルタワービル」のほか、もう1件3月10日に競落されたもの、再度入札対象になった物件があった。

 それは都営大江戸線「新御徒町」駅徒歩約2分に立地する築32年のマンションである。対象になったのは専有面積約13坪の2LDKの部屋である。ただし、この物件の競売対象になっているのは共有持分10分の6である。

 売却基準価額は346万円であったが、3月10日では入札17本で最高価1,700万円にて競落されていった。しかし、結果として代金不納付で、再び同条件で競売に付された。おそらく3月10日の競落者は共有持分の競売であると認識していなかったのではないだろうか。

 というのは、競落水準が売却基準価額の5倍近いし、競落者は再販会社と見られるからである。競落後に気づき、検討の結果、代金不納付としたのではと考える。

 ちなみに、この物件の占有者は、対象となっていない残りの10分の4の共有者である。こういった場合、たとえ競落した持分が過半であったとしても、占有者である相手方共有者に明渡しを請求できない(引渡命令も発令されない)。買受保証金692,000円をあきらめた方が損害軽微と判断したのだろう。

 8月4日では入札15本で最高価923万円にて競落された。今回は共有持分が対象であることを認識した上での競落であるだろう。競落者は占有者である相手方共有者と交渉し、共有者の持分買取りや、競落持分と第三者へ同時売却するなどを行うのが通常である。

 また競落者が相手方共有者との交渉がまとまらない場合は共有物分割請求訴訟により、1部屋全体の換価競売に付すこともありそうだ。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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