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東京競売ウォッチ

2014年9月24日

第247回 収益不動産を中心に価格上昇

 東京の不動産市場は収益不動産を中心に価格が上昇している。競売市場でも、これまで比較的応札が少なかった物件にも、多くの入札があるようになってきた。

 例えば区分所有形式の事務所である。区分所有は住居でないと、銀行評価もされにくい状況であったが、収益性があれば、応札されるようになった。

 8月7日開札では、JR山手線「高田馬場」駅徒歩約4分に立地する区分所有事務所2戸が対象になった。築約35年で旧耐震基準の建物内の2戸は、専有面積が14坪前後で、それぞれ賃料は月額15万円程度である。売却基準価額は1つが1,778万円、もう1つが1,602万円であったが、これに対し14本と12本の入札があった。

 競落されたのは2,330万円と2,059万円であって、実質利回りは年6~7%程度である。区分所有事務所で、旧耐震構造であれば、アベノミクス前では、実質年8~9%での応札であったと思うので、2割以上、競落水準が上がっているのではないだろうか。

 ところで、昨今建築費の上昇がよく話題になっている。施工面積1坪あたり鉄筋コンクリート造で、100万円超とも言われるところである。

 競売不動産の評価書では、建物の積算評価額を算出しているが、その場合まずは同等の建物を新たに建設した場合いくら掛かるか(再調達価格)を見積もる。その上で築年や管理状態を鑑みて、その見積金額に現価率を乗じて現在価値を算出している。現在鉄筋コンクリート造の建物の再調達価格は1坪85万円程度となっている。

 今後、建設費上昇に伴って、この再調達価格が見直されることにもなってくると思われ、売却基準価額のかさ上げにもなるだろう。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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