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東京競売ウォッチ

2025年09月09日

第759回 遺産分割審判による競売

 空き家や所有者不明土地問題の解決の一助ともなる相続登記の義務化が実施されて1年以上が経過した。これにより相続により所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記を行う義務が生じた。しかし、相続登記が何代にもわたり行われずにいる不動産はまだまだかなり存している。そんな不動産は現状に合わせる登記が何段階にも及ぶことになる。

 8月27日開札で対象となった東京メトロ丸ノ内線「中野富士見町」駅徒歩約10分に立地する一戸建ては昭和16年に取得されてからその後何と11回の相続が起こったものが未登記で放置されていた。その結果、現在は15名の共有状態となっている。今般相続人の一人から家庭裁判所に遺産分割審判が申し立てられ、その結果過去の相続登記が一気になされた上でこの審判に基づく競売が東京地裁に申し立てられ競売となった。

 土地は西側等で幅員5.5mの公道に面した約80坪で、そこに空き家である古家が建っている。この競売での売却基準価額は1億4102万円であったが、これに対し入札25本とこの日最高の入札が集まり、最高価2億6600万円にて競落された。売却基準価額に対し90%近い上乗せ率であったが、土地値にして1坪340万円弱は立地から事業用地として採算が合う水準なのであろう。

 今後このような相続登記未了で放置された不動産がこの例のように遺産分割審判により競売に付されるケースは増えると考えられる。但し、土地の価値が先の例のように無ければ、実際にはなかなか進まず、大都市圏のみでの増加になるように思う。

山田 純男(やまだ・すみお)

1957年生まれ。1980年慶應大学経済学部卒業。三井不動産販売およびリクルートコスモス(現コスモスイニシア)勤務後、 2000年ワイズ不動産投資顧問設立、及び国土交通省へ不動産投資顧問行登録(一般90号)。主に投資家サークル(ワイズサークル会員)を 中心に競売不動産や底地などの特殊物件を含む収益不動産への投資コンサルティングを行っている。 著書に「競売不動産の上手な入手法」(週刊住宅新聞社、共著)「サラリーマンが地主になって儲ける方法」(東洋経済新報社)がある。 不動産コンサルティング技能登録者、行政書士、土地家屋調査士有資格者。


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